ベルリンの壁



ブランデンブルク門より約1.5Kほど南に、「テロのトポグラフィー」という屋外展示場がある。ここは、ナチス時代にゲシュタポの本部があった所だ。
やや黒ずんだ、歴史を感じさせる重厚な建物のあちこちに、弾痕が残っている。ナチス時代の恐怖政治のありさまを、バネルで伝えているのが「テロのトポグラフィー」である。
その脇には、ベルリンの壁が残されていた。高さ4mほどで厚さは15cmと、思いのほか薄い壁だ。
道路側の壁はどこも傷だらけで、鉄骨がむき出しになっている。所々に穴が明いていて、赤や青、緑色のペンキの落書きだらけだ。
「梯子をかければ、こんな壁は乗り越えられるだろう」と思うほど、簡粗な造りが意外だった。
しかし壁に囲まれていた東西分裂時代、壁を越えて西側に逃げ込むのは至難の業で、ほとんど不可能に近かったようだ。厳しい国境警備で、常に銃口を向けられている恐怖。たとえ東側の壁を越えても、無人地帯を隔てた、もう一枚の西側の壁が待ち受けていた。
壁を超えた成功例の一つは、ブランデンブルク門の正面を、装甲車で突破した事実があるらしい。
その当時は、門の側まで壁が築かれていた。今ではその跡が、路上に埋め込まれた小さな石によって示されている。
ところで、「崩された壁の行方は?」
一部は、土産物屋で売られていた小指ほどの破片もあったが、大方は、道路舗装などにリサイクルされたという。資源を大切にする、ドイツらしい合理的な考えである。






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