紺碧海岸の小国・モナコ



国境線を一時停車もせずに通り抜けた車は、モナコに入国した。
辺りはニースの風景と似ているが、密集した建物群で国の違いを感じとれた。
小降りだが、あいにくの雨だ。どんよりとした空。道路沿いの岩場に砕け散る荒波。地中海の紺碧の風景からほど違い光景でもある。
そんな怒濤を迎えうつかのように、張り出した海岸線の突端にどっしりとかまえているのが、「海洋博物館」である。海洋学者だった、大公アルベール一世が1910年に建てたという館は、王宮のように荘厳だ。
近くのサン・マルタン公園の一角には、咲き競う草花やアーモンドの花々が華やいている。
モナコといえばカジノと答えが返ってくるほど、我々には知られているカジノ。
緑色の屋根。クリーム色の壁。壁のそこここに、ギリシャ建築のような石造で飾られたカジノは、まるで宮殿を思わせる。正面玄関に長く張り出した庇には、「CASINO MONTE−KARLO」の金文字が浮き上がって見える。
むろんわたしたちは、巨利を夢見てモナコヘ来だのではない。外観からゴージャスな気分を味わうだけだ。ガイドのB氏の話によると、収益の4%が公国に入るという。むろん、国にとってカジノは、貴重な弗箱である。
わたしは、マレーシアのカジノの情景を思い出していた。旅で、ゲンティン・ハイランドのホテルに泊まった折、ホテルのカジノヘ妻と行った。以前からルーレットをやってみたいと思っていたが、博徒(?)たちの血走った目を見たとたん、ルーレットヘの興味は霧のごとく消え失せてしまった。B氏は言う。
「モナコのカジノが他と違うところは、一攫千金を狙うところではなく、リラックスして楽しむところです」
「でもわたしのような貧乏人が金を儲けると、リラックスする余裕などありませんよね」
わたしの言葉に、B氏はケラケラと笑った。
カジノの右側は、世界の著名人が利用するという「オテル・ド・バリ」だ。その左側には「カフェ・ド・バリ」といった、モナコを代表する建物が並ぶ。
もう一つ、モナコには「モナコグランプリ」が名高い。一周約3.3Kmのコースを78周し、平均時速が140Km。F1(フォーミュラ・ワン)で市街コースを走るレースだ。その瞬間最大速度は、300Kmほど出ている。
常設のサーキットではないだけに、完璧な操作を要求されるF1ドライバーにとって、「モナコグランプリ」は垂涎の的に違いない。



モナコは他のヨーロッパに比べて、治安が良いと聞く。女性の夜中の一人歩きも、さしたる危険はないそうだ。3万人のうち、500人が警察だという。犯罪が起これば素早く、国境が遮断されるそうだ。
歴代のモナコの君主が眠っているのが、「モナコ大聖堂」だ。ここに、故グレース王妃も安置されている。
ロマネスク・ビザンチン様式建築の白壁の聖堂は、威風堂々と聳えている。
ふたたび、海岸脇の道路に出る。波は高いが雲が薄れ、切れ間も見え始めた。
沖に向かって、海の青さも増してきた。




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