建物博物館の街・プラハ



大戦の被害が比較的少なかったプラハ(チェコ)は、中世の街並みを今に残している。街のそこここで見かける重厚な建物群を眺めていると、古の時代にタイムスリップしたかのような錯覚にとらわれてしまう。
十四世紀のプラハの黄金時代に築かれたプラハ城は、まさにその粋を集めた建築美で、プラハのシンボルでもある。
城内にある尖塔の高さが99mという、「聖ヴィート大聖堂」の巨大で鮮やかなステンドグラスに目を見張ってしまう。
城の中央には広いテラスがある。かつて、ヒトラーが入城してこのテラスに立ち、「我が人生最高の時」と言ったというテラスだ。
城を出て、くねくねと曲がった「黄金小路」の石畳を歩く。この道は、歴代の王が戴冠パレードを行ってきた、「王の道」でもある。
小路の両側には、色とりどりの小さな家が並んでいる。まるでオトギ話の世界に倣って造ったように可愛らしい。1597年に造られ、城内で仕えた召使たちが住んでいた地区だという。
通りの中ほどの赤い家の隣の青い家は、実存主義文学の先駆者・カフカが住んでいた家だ。騒がしい旧市街の下宿から、ここに通って仕事をしていたという。
急勾配の石畳をどんどん下って行く。遠方には悠々と流れるヴルタヴァ川が見えてきた。川に架かる、どっしりと構えたカレル橋が華麗である。
全長520mで幅は10mもある。約600年前に造られ、欄干には30体の聖人像が並んでいる。日本人にもお馴染みの聖フランシスコ・ザヴィエル像があった。
欧米人の観光客で混み合った「歩行者天国」の橋では、物売りや似顔絵描き、それにジャズ演奏するグループも見られる。しばし演奏に聞き惚れ、サックスを吹くダンディーな顎鬚氏と記念撮影をした。
振り返ると、小高い丘の上に悠々と構えたプラハ城が、いちだんと美麗な姿を見せていた。




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