ペナン島の蝶園



マレーシアのペナン島には、世界一だという熱帯蝶園がある。
バツー・フェリンギ・ビーチより車で15分ほど山側に入った、「バタフライ・ファーム」だ。
マレーシアの代表的な蝶が約4000匹ほど、1500uの網室の中で放し飼いにされている。
1月とはいえ、さすがに熱帯の国。ネット室は、むっとする暑さだった。植物園のように草木が茂り、お花畑の
そこここには、たくさんの蝶が飛び回っている。
ハイビスカスや百日草の花には、翅を動かしながら、ハレギチョウが吸蜜していた。飛び交うキチョウやマダ
ラチョウ。シロオビアゲハやモンキアゲハ、ベニモンアゲハは、足元の水溜りで吸水している。
餌台に置かれたバナナには、リュウキュウムラサキやコノハチョウ、フタオチョウ、ルリタテハが、果汁を吸っていた。
「わたしのコレクションのマレーシアの蝶たちは、現地ではどんな生活をしているのだろうか?」
こんなテーマを持って、蝶園を訪れることを楽しみにしていたわたしは、目を皿のようにして蝶たちの飛び
交う姿を眺めていた。
木々に覆われた観察路を歩いていると、一匹のタテハ科の蝶がバサバサと乾いた翅音をたてながら近づいて
きた。何と、隣にいた妻の腕や手先に止まったのだ。ややあって、わたしの頭部に腰を据えた(?)。たっぷりと汗をかいたここが気に入ったと見え、歩き回っていても離れようとしない。
近くにいた欧米糸の3人の青年たちが、「写真を撮ってあげる」と言い、シャッターを切ってくれた。擦れ違うどの人々も、わたしの頭頂の蝶を見て、ニャリとして行く。
下翅の美しいキシタアゲハの近くに、探していたアカエリトリバネアゲハを見つけた。ジンジャーの葉先に
止まっていた。
わたしも何頭かの標本を持っているが、今ではワシントン条約で、マレーシアからの持ち出しが禁止されている
美蝶だ。
初めて目にする生きたトリバネの姿は、実に躍動的だ。その体の輝きが素晴らしい。こんなシーンは、なかなか
見ることはできない。
宝石のような眩い輝きに、しはしわたしの心は奪われていた。




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