庭は秋模様



夜半から降り出した雨は雷を伴って、 夜半から降りだした雨は雷を伴って、窓ガラスにたたきつけるようにして明け方まで降っていた。それはまるで、送り梅雨のような激しさだった。
きっと、草花や木々は、張り巡らされた根からたっぷりと命の水を吸い上げて、ほっと一息ついていることだろう。
雨は香りを迎えてくれた。キンモクセイの黄金色の蕾を見るまに太らせて、花びらが開き始めると、芳香を漂わせている。
こんもりと茂った木の前に立ち、大きく息を吸い込むと、甘い香りが体の中いっぱいに流れ込んできた。
「魔の9月26日」との言葉を、新聞記事で知った。
それは、半世紀ほど遡る。、1954年に「洞爺丸台風」があり、1958年には「狩野川台風」があった。
さらに1959年の「伊勢湾台風」だ。ともに、9月26日に襲来している。
さわやかな秋晴れに誘われて、庭の手人をした。
気になっていた生け垣を刈りそろえ、自分が散髪をしたかのようにさっぱりとした。キンモクセイの甘い香りに交って、アシタバの芳香も漂ってくる。
庭のあちこちに咲き競っている、こんもりと塊った、ハマウドの花のような白い小さな花群。そのアシタバの花は、甘酸っぱい香りに誘われた、たくさんの虫たちの酒場になっていた。
アブやアシナガバチ、それにセセリチョウやハナグモ、ハエトリグモなどの虫たちだ。緑のビロードをまとったハナムグリも、夢中で蜜を吸っている。キアゲハの幼虫がことのほか多い。アシタバの葉が食草なので、その葉をモリモリ食べている。丸々と太って大きい終齢幼虫は、人目につき難いどこかの場所で、サナギとなるのだろう。わたしはそんな幼虫たちに、心の中で叫んでやった。
「腹いっぱい食べて、来年は素晴らしい衣で舞ってくれ!」
そんな虫たちの食事場に、カマキリがいた。獲物を狙って、静止したまま身構えていた。研ぎ澄まされた鎌はいつでも使えるように、ボクサーが身構える格好に閉じている。
花蜜に集まる虫たちを狙うとは、ちゃっかりしているカマキリである。いや、何と頭のいい、カマキリなのだろう。居ながらにして、獲物にありつける訳である。
ヤマトシジミやキチョウも慌しく蜜を求めて飛び交っている。庭のあちこちに、オンブバッタもいる。どれも、大き
なメスの背中に小さなオスを従えた(?)ペア・バッタだ。
紫色に染まった、コムラサキシキブの小さな実の群れが、宝石のように輝いていた。
深まりゆく秋の柔らかな日差しは、辺りの緑を鮮やかに照らし出している。





HOME