百塔の町・ドレスデン



蛇行しながらゆったりと流れる、エルベ川に沿って栄えた古都・ドレスデン。
町の中心にある「ツヴィンガー宮殿」は、バロック建築の粋として世界に知られている。17世紀末に即位した、ザクセン王の偉大な権力が窺われる宮殿だ。
増築部分は現在、「アルテ・マイスター国立絵画館」で、ヨーロッパの古典絵画の名品揃いだ。ラファエロの「システィーナのマドンナ」を始め、レンブラント、ルーベンス、エル・グレコ、ベラスケス……などなど、膨大なコレクションである。かつて絵画集で見たことのある、ジョルジョーネの「まどろみのヴィーナス」を観ることができた。
きらびやかで巨大な王冠を塔上に配した、「王冠の門」を出ると、堀がある。鴨の群れが羽を休めていた。土手を隔てた大通りは、車や路面電車が頻繁に走っている。緑に囲まれた堀沿いの小道は、絶好の散歩道となっている。
王宮の北側には、78の聖人石像が屋根に据えられた、ザクセン州最大という「カトリック宮廷教会」がある。その隣が、「ゼンバーオペラ(国立歌劇場)」だ。
正面がドーム状のクラシックで優美なオペラハウスは、初代楽長がウェーバーで、1843年にワーグナーが後任の座に着いたという。我が国でも有名な『タンホイザー』は、ここで初演されたそうだ。
ドレスデンは、1945年の空襲で廃墟と化したが、戦後、壮大な建築物の大半は元通りに再建されたという。
かつてのザクセン王の居城だった「ドレスデン城」。101mある時計塔が城の最古の部分で、「にの塔よりも高い建造物は造ってはならぬ」という王のお触れは、300年経った今でも忠実に守られているそうだ。
城の長廊にある壁画「君主の行列」は、101mに及ぶタイル壁画だ。
アウグスト王をはじめ、12〜20世紀の35人の君主と芸術家を描いた世界最大の磁器タイル壁画は、マイセンで焼かれた25000枚のタイルから成っている。その背景の黄色が実に鮮やかで、辺りを華やかにしている。
「ドレスデンは素晴らしい地である」と言ったゲーテの言葉や、「ヨーロッパの芸術と文化の拠点」との言葉も頷ける。





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