南フランスの「ピカソ美術館」



紺碧の海を眺めながら、リヴィエラの海岸線に沿って車は快走する。
カンヌとニースとの間に、海に突き出た港が見えてきた。ここがアンティーブで、海際こ「ピカソ美術館」がある。
城壁で囲まれた、こじんまりとした館である。かつては「グリマルディ城」だったが、1946年にピカソのアトリエとなったのだ。
館に入ると砦の隅に、城砦の名残の2門の大砲と、黒光りした砲丸が置いてあった。
フランスに定住した、スペインの画家ピカソは、常に斬新な境地を開拓し、版画や彫刻、陶器の作品も有名である。
薄暗い部屋に飾られた、彼の写真。その眼差しは、獲物を狙い定めた猛獣のような気魂が感じられる。
エメラルド・ブルーがキャンバスとなる庭には、さまざまな彫刻が並んでいる。その日の天気によって、作品の見方か変わるといった、緻密な計筧のうえに配置してあるのだろう。
ピカソの作品は、「青の時代」や「赤の時代」の古典調から、超現実派・抽象派、表現派などに変転を極めた非凡な天分に富む画家である。その作品も、実にユニークであることは、今さら言うまでもない。
ピカソはこのグリマルディ城で、その躍動的で力強い作品を思う存分発揮したのだろう。わたしはテラスに立ち、しばしコート・ダジュールの海を眺めていた。




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