木枯しのうた


すっかり葉を落した、遊歩道のナンキンハゼの木。その枝先の実は、鈴生りだ。
そんな実を求めて、鳥たちが群がっていた。
白い息を吐きながら、歩きつつナンキンハゼの木を見上げる。梢に垂れ下がった、たわわに実った房に、ヒヨドリやムクドリの群れが突いでいた。
辺りは、鳥たちの合唱で煩いほどだ。
「もっと静かに食べればいいものを……」
心に中で呟きつつ、通り抜けて行く。
木の下には、鳥たちの食べ殻が散らばっている。歩くたびに踏みつけた殻が、パチパチと小気味好い音を立てている。
温もった日和の数日後は、一転して北風の強い日だった。
二階の窓から、庭を眺める。
柿の木やサルスベリ、梅などの木々は、枯れ木のような枝を晒していた。
冬ざれた庭木の中でも、ハゼの木は賑わっている。鳥たちが、次々とハゼの実を求めてやって来るのだ。
いつも目にしている、メジロやシジュウカラはこの実が大好きで、群れで集まって来る。
それに、ヒヨドリやジョウビタキ、ツグミなどの姿も毎日目にしている。ときには、カラスまでやって来る。
夜半に、風が止んで雨となったが、明け方には上がった。
二階の窓から見やる、隣の公園のそこここに、水溜りができている。
ブランコの下の水溜りには、キジバトが二羽、水浴びをしていた。この仲の良い、二羽のキジバト。いつも、ブランコ側の桜の枝に、並んで止まる姿を見ている。
二日後、また北風が吹き出した。
比較的、天候が安定している冬のころだが、これも異常気象のせいであろうか?
そんな木枯らし便に乗って、冬の使者・ジョウビタキがハゼの実に来た。長い尾をピクピクと上下に振って、囀っている。
先客のメジロやシジュウカラの群れを、追い出していた。縄張り意識の強い、ジョウビタキのいつもの仕草でもある。
木枯らしが吹いて、しなっている小枝の先の実。鳥たちは、揺れながら実を啄ばんでいる。
それは、リズムに合わせて鳥たちが、踊っているような情景でもある。




HOME