メコン川の豊かな魚と巨大魚


世界的に見てもメコン川は、水生生物の最も豊かな地域の一つだ。それは、南米アマゾン川に次ぐといわれている。生息が特定・推定されている魚は、1200種類以上に及んでいる。食料として、重要な蛋白源となっている魚は、約120種が商業的に取り引きされている。
メコン川の流れの速い上流では、ドジョウや吸盤ナマズ、鯉などの魚が主流である。流れの緩やかな中流や下流域では、鯉やメコンに多いナマズが中心となる。メコン川の魚の多くは、河川の中で回遊している。
現在危機に直面しているのが、淡水に生息するメコンイルカである。かつて下流部では、一般的に見られたそうだが、治水と乱獲によって、見ることが非常に稀になってしまったという。その他、カワウソや固有種のシャムワニも、同様な運命にあるようだ。



ナマズの豊富なメコン川で、その巨大さは驚くばかりだ。「プラー・ブグ」という巨大ナマズは、体長3メートルにも達し、鱗の無い魚では、世界一とも言われている。
このプラー・ブグは、メコン川にしか生息しておらず、その生態などは不明な点が多いという。産卵期の4月から6月に、ラオス南部からメコン川を遡り、中国の雲南省辺りで産卵するといわれている。その後、再び下流に戻ってくるという。
毎年4月下旬から5月末まで、タイ北部のチェンコーンのとある村では、この巨大ナマズのプラー・ブグ漁が行われている。その時節は、ちょうど乾期の終るころで、メコンの水量が最も少なくなるころでもある。狭まった川幅いっぱいに、舟で網を流してプラー・ブグを捕獲するのだ。
そんな時期になると、漁師たちは川岸に番屋のような臨時の掘っ立て小屋を建て、そこで暮らす。そのひと月ほどの間に、300人から400人の漁師が集まってくるという。そんな人気の原因は、単なるビッグ・ハンターだけではない。プラー・ブグの肉が珍味であり、高値で取引されるからだ。しかし、そんなに多くのニワカ漁師たちが大金を手に入れることは難しく、巨大ナマズはなかなか捕獲できないようだ。



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