花の香り


日ごとに膨らみを増す、沈丁花の蕾。
風は冷たいが、日溜まりは暖かい。そんな場所の蕾は大きく、その先端は赤みが多い。 
我が家の庭には、数株の沈丁花があり、早春をいち早く飾る花の一つでもある。
暖かさが増すにつれて、つぎつぎと花が咲き始め、辺りに香りが漂いはじめると、春を感じる。この香りを1年中かぎたいと思うが、「花の命は短くて……」とのごとく、早春の一瞬の楽しみでしかない。 
花に顔を近づけると、緑濃い葉に囲まれた小さな花群が愛らしい。花と葉とのコントラストが鮮やかであり、気品を感じる。
芳香のある花々はさまざまあるが、その中でもクチナシがわたしの好きな花である。
艶やかに緑輝く葉と、純白の花弁もさることながら、辺りを包み込むような甘い香りが何ともいえない。残念なことに、花季が夏のために花が痛み易く、「純白の乙女」はセピア色に染まり易い。
香りのある花を上げてみると、モクセイやニオイエビネの甘い香り。スダジイやモクレンの、甘酸っぱい花の香り。灼熱の太陽の下で、いきいきと咲き誇るキョウチクトウの甘い香り。それらの四季折々の花香に出合う時節を楽しみにしている。




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