ウグイス



鳴き声を聞いたのは早朝だった。我が家の隣にある、公園の方から聞こえてきた。
近寄ってみると、マテバシイの茂った木の中に声の主はいるようだ。
じっと目を凝らしていると、小さな姿態を茶緑色で飾ったウグイスがいた。春の和らかな日差しを浴びて、気持ち良さそうに唄っていた。まだ練習中といったぎこちない囀りだが、しだいにオペラ歌手のような素晴らしい歌声で、彼女? を酔わせるのだろう。
わたしが近づき過ぎたせいだろうか? 落ち着きを失ったように、せわしく体を左右に振っている。でも喉のほうは膨らませて、得意の美声を発している。せっかくの楽しみの歌を邪魔してはいけないと、わたしはそっと木から離れた。今年初めて聞くウグイスの響きである。
公園の辺りを見渡してみると、コブシや桜の若葉が茂っている。 足元の芝生の間には、オオイヌノフグリや赤紫色のホトケノザなどの小さな花々が、春を告げていた。ペンペン草といわれるナズナの花茎が、ロゼット状の葉から勢いよく立ち上がり、白くて小さな花弁が開き始めたところである。その回りで餌を啄ばんでいるスズメ連は、今までの風邪引き声が直ったのか? 張りのある澄んだ春の囀りに変わっていた。



近くの楠木から、二羽のヒヨドリが飛び立ち、連れ立って緑地帯の中へと消えていった。きっと、朝のランデブー飛行なのだろう。
ヒョドリが消える時を同じくして、「ホ・ホ・ホケキョ」と、遠方の木から聞こえてきた。ここからは見えるはずはないが、先ほどの楽符通りに歌えないウグイスに似ている。




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