ヤシ林とヤシ酒


スリランカで二泊の宿となる、シーギリヤの「ハバラナ・ビレッジ」へ向けてバスは快走していく。道路の両側には、ココヤシのプランテーションがどこまでも続いている。ひょろりと伸び上がったヤシの木は、百年以上経ったものだという。
いうまでもなく、ココヤシは熱帯地方の有用植物である。料理に使われるコプラ。これは、果実のなかの胚乳を削ぎとって乾燥させたものだ。清涼な液体は、ココナツ・ミルクと呼ばれる、天然の飲料水となる。その実は、マーガリンや石鹸の原料などにも利用される。
果実の繊維は、ブラシやマット、ロープに加工される。ヤシは、熱帯を象徴する植物である。日本の植木屋でも時々見かけるが、果実から数枚の葉が出たばかりのヤシは、立派な観葉植物ともなっている。
それに、ヤシ酒を忘れてはならない。ドブロクのような色をした「ラー」や、蒸留した「アラック」がある。一日たりとも晩酌を欠かしたことのない、呑兵衛のわたしにとって、黄昏が近づくと、気もそぞろになってくる。林立するヤシの農園を眺めつつ、「今日は呑めるだろうか」と、最前より気になっていたのだ。

 


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