ヒヨドリと柿の実


玄関のドアを開けたとたん、柿の木から二羽のヒヨドリが鳴きながら飛び立った。
熟れた柿の実を食べていたようだ。食べかけや、ヘタだけになった実が枝に残っていた。まだ大半が熟していない実ばかりなので、首を傾げてしまう。
それよりも、いつも感心するのだが、熟して柔らかくなった食べごろがどうして分かるのだろうか? 確か、ビワの実が熟れた、入梅のころもそうだった。ヒヨドリが訪れて、熟れた実を食べていた。ヒヨドリは毎年、食べごろを教えてくれるのだった。
暖かい、澄んだ秋空の朝だった。
庭に出て辺りを見渡すと、地植えのヒメリンゴ実が真っ赤に色付き、落葉を始めた枝にひときわ輝いている。エメラルド色のムラサキシキブの実は、まさに宝石の輝きのようだ。今を盛りと咲いているのが、ホトトギスの花である。秋真っ盛りの庭模様である。
柿の実を一つもぎ取ってみると、熟れて柔らかくなっていた。すると、どこからともなく騒々しく囀りながら、二羽のヒヨドリが上空を過ぎった。それは、どこかでわたしの姿を見ていたようなタイミングだった。
「何で俺たちのご馳走を横取りするんだ!」
ヒヨドリはわたしに怒鳴り散らしているように聞こえた。国境のない自由な鳥たちのこと、「あなたのものも俺のもの」と思うのも当然だ。
わたしは目を細めて、青空に吸い込まれていく二羽のヒョドリたちの姿を眺めていた。

   


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