巨大なシーギリヤの岩山


鳥の鳴き声に目覚めた。さまざまな鳥の囀りが聞こえてくる。緑の多いスリランカのこのホテルは、鳥たちの館でもあるのだろう。
見上げる天井扇は、ゆっくりと回っている。テーブル横の蚊取線香皿には、燃え尽きた灰が溜まっていた。
朝食後、バスに乗り込む。入り口に立っている助手のハンサム青年Aさんと、運転席のYさんと挨拶を交わす。「アーユボーワン」とシンハラ語で言いながら、合掌し合う。ここから40ほどで、8時半近くには美女の待つシーギリヤに着くだろう。美女とはむろん、「シーギリヤ・レディー」と呼ばれている、フレスコ画のことだ。
町を離れるごとに、緑の世界に変わっていく。淡い緑色と深い緑色が織りなす木々の青々とした風景。町から町へと移動するときに見られる、そんな風景は、わが心を癒してくれる。道端には、ランタナの可愛いい花が、そこここに咲いている。
沿道で見られる樹々は、チークの樹とユーカリとが混植されている。この辺にいる野生象が、チークの葉を食べてしまうという。そこで、育ちの悪いチークに替えて、生育の早いユーカリの木を、後から植えたのだという。
沿道の大樹が潅木に変わると、見晴らしが良くなってくる。辺り一帯は、重畳な森が広がっている。その遠方に、忽如(こつじょ)として巨大な岩山が姿を現した。ガイドのアヌラさんが指を差しながら言った。
「シーギリヤ・ロックが見えてきました」
青々と広がるジャングルの中に、ほとんど垂直に切り立った赤褐色の岩山は、しだいに姿をさらけ出して来た。



岩山の近くでバスから降りて、巨大なロックを見やる。大きさもさることながら、その異様な景観に目を見張ってしまう。
巨大ロックに向かって、真っ直ぐに伸びた道路に沿って歩いていく。ほどなくすると、木立に囲まれた小道に変わった。なだらかな坂道をしばらく歩くと、山裾に出た。195メートル余りもあるという見上げる岩壁は、覆い被さってくるような脅威を感じる。
岩山に向かってしばらく歩くと、歩道沿いに石窟寺院があった。自然の大石が、積み重なった洞穴といった様で、見た目には寺院とは思えない。覗いて見ると、中央には立派な坐禅石があった。きっと、その上で瞑想をしていたに違いない。
    
    



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