無限の可能性を求めたエローラ石窟


 


デカン高原の山々を眺めつつ、ダウラターバードから30分ほどでエローラの石窟寺院に着いた。
乾き切った黄土の道を歩いて行くと、前方の大樹の前に、鮮やかなパンジャービードレス姿の一団がいた。
ガイドのC氏に訊くと、中学生の遠足だという。でっぷりとした先生は、生徒たちの集合写真を撮っていたのだ。




そんな姿が面白いので、わたしはカメラを向けた。すると、振り向いた中年男性の先生。今まで生徒の方へ構えていたカメラを、我々の方に変えてきた。生徒たちはこちらを見ながら、一斉に歓声を上げる。皆が次々と手を振ってきたので、わたしたちもそれに応えた。




道路沿いの石垣の傍には、大株のブーゲンビレアが茂っており、葉を隠すほどに紫色の花が咲き競っている。タマリンドの大樹は、程好い日陰を作っていた。
石窟群の南側にある、7世紀に建造された10窟に入る。ここはエローラの仏教窟の中でも、唯一のチャイティヤ(塔院)窟だ。窟院の奥には、それを示すストゥーパ(仏塔)が祀られている。一枚岩に彫られた、高さ8メートル余りの塔だ。その前には、高さ5メートルの仏陀が腰掛けている。薄暗い天井を見上げると、馬蹄形に彫られた装飾が見事である。ストゥーパの後部に道があるので、信者がするように右蟯行道をして一巡する。




1983年に世界遺産に登録されたエローラ石窟は、丘の中腹2・5キロに渡って広がる石窟寺院群だ。窟院は、全部で34ヵ所ある。南から北へ、第1窟から第12窟までが仏教窟である。第13窟から第29窟がヒンドゥ教の窟で、第30窟から第34四窟までがジャイナ教の窟となっている。石窟は東を背にして、西を向いて掘られている。




仏教窟が最も古く、ヒンドゥ教、ジャイナ教の順で掘り進められた。756年に着手してから、完成までに1世紀以上を要したという。当時のインド人の平均寿命は30歳前後だったというから、数世代に渡る大仕事だったのだ。




中央の石段を上ると、三階建の石窟が現れた。ヒンドゥ様式の影響を受けて、8世紀ごろに建造された第12窟だ。一階には、3列の石柱で支えられた大広間と、両側に仏陀の座像のある小さな部屋がある。最上階に上ると、ホールになっており、両側には座像があった。さらにその奥には、7つの小さな座像が並んでいる。その頭上の壁には、菩提樹や傘が彫られていた。




12ヵ所ある仏教窟は、先ほどの10窟以外はすべてヴィハーラ(僧院)窟である。つまり、僧侶たちが寝泊りした、修行の場だったのだ。どの窟も、仏教が衰え始めた7世紀から8世紀にかけて造られたものである。最も大きなものが、第5窟の「マハルワダ」と呼ばれている窟だ。


   


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