遺跡に近いレスト・ハウスへ

隣のベッドにいる、W君の目覚まし時計に目覚めた。時計は、午前3時半を回ったところだった。ウイスキーのおかげで、ぐっすりと眠ることができた。列車は、徐々に減速している。
サーンチーの遺跡へ行くには、ボーパール駅で降りるのが一般的だ。しかし最も近道は、これから降りる予定になっている、隣駅のヴィディシャーのようだ。9キロほどで遺跡に着くと、ガイドのG氏は言う。
列車がヴィディシャーに着いたのは、午前4時を過ぎたところだった。昨夜乗車したブサワル駅から、7時間余りかかったことになる。これから近くのレスト・ハウスで、朝食を含めて3時間ほど休憩してから、遺跡へ行く予定だ。


薄暗い駅に降りて、驚いた。構内のコンクリートの床には、足の踏み場もないほど大勢の人々が、寝ていたのだ。毛布に包まって横になっていた人たちは、我々のトランクを引く音に目を覚ましたようだ。腕枕をしたり、寝床にしゃがみ込んだりして、ぼんやりとした顔でこちらを見ていた。薄暗い中で、無表情なたくさんの眼は、奇妙な光景でもあった。


広い庭の中に、スマートなバンガローが点在していた。わたしはW君と、瀟洒な造りの建物に入る。先ずは洗面、小用、着替えなどの出発の準備を整えてから、ベッドに横になって仮眠をとる。目覚まし時計をセットしてあるので、安心である。隣のベッドの若いW君は、すでに寝息をたてていた。

   


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