明日は立春だ!


暖かさに誘われて庭に出た。風は冷たいが、日差しは春を思わせ
るほど暖かい。今ちょうど、ロウバイの花が咲いている。花びらに、ロウを塗ったように艶やかな黄色い花だ。
葉を落として、枯れ木のようになった、木の下にある水仙の花。冬ざれた庭を飾る、花の一つである。
わたしが家に入るのと、入れ代わったかのようなタイミングでツグミが庭に訪れた。ガラス戸越しに見ていると、下植えの万両の実を啄ばんでいる。この時期は食料確保が難しいのだろう、口に入るものなら何でも……と言いたげに、夢中に実を啄ばんでいた。ややあって満腹になったのか? 飛び去って行った。
1月の終わりから2月にかけての今ごろは、一年のうちでも最も鳥たちの食べ物が少なくて、飢える時期である。



数日前から部屋は、活け花のおかげで華やいでいる。逸早く、春爛漫である。
玄関にはナノハナ、キンセソカ、それに白と紫色のポピー。洗面所には濃い赤色の、バラ。トイレにはオレンジや黄色のポピーとストック。二階のフロアには、水仙が芳香を放っている。
これらの花々に囲まれていると、心も浮き立ってきて、自分だけが春を先取りした気になってきた。
そういえば、1月末の暖かい昼下がりに、家の近くの造成地の水溜りで、一羽のツグミが水浴びをしていた。「この寒いのに……」と、わたしは足を止めて、ポケットに両手を突っ込みながら、しばし眺めていた。
今日は節分であり、明日は立春である。まだ暦のなかでの春であり、まだまだ厳しい寒さが続く。しかし、言葉だけでも明日から春かと思うと、心も春めいてくる。
力強く土を破って顔を出すフキノトウの姿を思い浮かべつつ、心の中に温もりを感じ始めた。




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