イラン中部のオアシス都市・エスファハーン。その街の中心部にある、レストランで昼食をする。肉と野菜料理もしかり、焼きたてのナンの味が実に美味である。

暑かったので冷えたノン・アルコール・ビールが、心地好く胃袋に流れ込んでいく。一気に飲み干してから、さらに一本をオーダーする。イランに来てから５日目、このビールの味にも慣れてきた。

実は晩酌を欠かしたことのないわたしは、禁酒国イランを旅することをだいぶ迷った。しかし、ペルシア文化の遺跡群を見るという魅力の方が勝っていた。「ひとときアルコールを忘れて、イランを旅しよう！」と、決断したのだった。

旅の１〜２日目は、アルコール飲料が無くて食事どきは物足りなかった。テーブルに向かうと、グラスに溢れたラガー・ビールの泡が瞼に浮かんでくる。諦め？　いやノン・アルコール中毒？　になったのか……、瞼からラガー・ビールのイメージが消え始めていく。しだいに、ノン・アルコールに馴染んでいったのだった。

イランは紀元前に醸造が行われていた、ワイン発祥の地ともいわれている。しかしアルコール類は、革命後に飲めなくなったという。ちなみにオーストラリアには「シラーズ」というブドウの品種が普及しているそうだ。その名はイラン西部の商業都市・シーラーズに由来するといわれている。