緑に囲まれたフマユーン廟

フマユーン廟についたのは、午後3時を回ったところだった。重々しく、堂々とした正門から入ると、大樹の茂みや芝生の緑が鮮やかだ。正面には、紅砂岩を基調として大理石で象嵌された、気品のある廟がどっしりと構えている。足元から廟へ向かって、水路が延びている。その中ほどには方形の池と噴水があり、勢い良く水を吹き上げていた。
ムガル朝第2代皇帝フマユーンは、怪我がもとで1556年に没した。彼を偲んで妃のハージー・ベーガムが、9年後の1565年にこの廟を建てたのだ。


広い庭園の中に廟を設けて、左右対称の建物の上にドームを載せている。この建築様式は、ムガル朝の故郷であるペルシアの影響で、インド・イスラム建築の傑作といわれている。後に、アグラやファテーブル・スィークリーのムガル建築として開花している。フマユーン廟は、その原型となっているのである。
建物は、47メートル四方の四隅を、切り落としたような八角形になっている。ドームまでの高さは、37メートル。入り口のアーチを通して見たとき、ひと際安定感のある姿を見せていた。
赤砂岩を基材として、要所の縁取りは白大理石を嵌め込んである。そのはっきりとした輪郭とコントラストは簡素な美しさに溢れている。この廟は、1993年に世界遺産に登録された。
建物の中に入る。中央には、白大理石の棺が安置されていた。フマユーンの仮の墓で、遺体は真下の地下室に安置されている。隣の部屋には、2つの大理石の棺が並んでいた。この廟を造った妃と、貴人のものである。



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