スターの印


名優と会う、楽しい旅だった。
むろん、直接ではない。映画の都・ハリウッドのそこそこで接する、モニュメントである。
ハリウッドのシンボルといえば、先ず「チャイニーズ・シアター」だろう。ロードショー映画館だが、スターたちの手形・足形でお馴染みの場所だ。
中国寺院風の建物は、辺りのアメリカ的ビル群の中にひときわ異風である。その建物の前の敷石に、スターたちの手形や足形が印されている。
ここは、いつ行っても賑わっている。敷石を前にして、記念撮影するグループや家族連れ。あちこちから歓声が上がっているのは、お好みのスターと巡りあったのだろう。
むろんわたしも、カメラのファインダーを覗きっ放しだが、混み合っていてシャッターが押し難い。
「やっぱり、ハリソン・フォードが人気があるわ!」
映画好きの妻は言う。その敷石を前にして、ワン・ショット。見渡してみても、この敷石は黒山の人だかりだ。わたしは、A・シュワルツェネッガーの前で、妻に撮ってもらう。
賑わっている人たちは、日本人の姿はちらほらで、欧米人ばかりだ。世界中からハリウッド目指して集まるというから、頷ける。



混み合いを避けるために、翌朝、出直すことにした。幸いにして我々の泊まった「Rホテル」は、チャイニーズ・シアターとは、ハリウッド通りを挟んで斜め向かいである。ほんの2〜3分の距離だ。
朝食後に行くと、昨日の賑わいが嘘のようだった。妻とともにスターたちを探しながら、シャッターを押しまくった。
「クラーク・ゲーブル」「ナタりー・ウッド」「ヘンリー・フォンダ」「フランク・シナトラ」「マルチェロ・マストロヤンニ」……みな往年のスターたちだ。40分ほど、夢中で探し、撮り巡っていると、しだいに敷石目当ての観光客が集まり始めた。
今回泊まった「Rホテル」は、「ロケーションNO.1」と、定評のあるホテルだ。第一回のアカデミー賞の授賞式が、このホテルで行われた。1927年にオープンしたという古い歴史があり、1986年に大改装が行われている。オープニング・セレモニーには、チャップリンやグレタ・ガルボが出席したそうだ。また、ヘミングウェイやクラーク・ゲーブルも、ここが気に入っていたという由緒深いホテルでもある。二階のロビーには、往時の銀幕のスターたちの資料が展示されていて、映画ファンにとっては興味尽きないだろう。
ハリウッドのもう一つのシンボルといえば、「ウォーク・オブ・フェイム」である。
これは、星形のブロンズ板がハリウッド通りの両側の舗道に埋め込まれている。「マイケル・ジャクソン」や「エルトン・ジョン」など、映画や音楽、テレビの分野で活躍した2千人以上のスターの名が印されている。その距離は約5キロに渡っており、さらに拡大されているそうだ。
妻とともに、1枚1枚名前を読みながら歩いていたが、混み合った舗道を歩くのに疲れてしまった。
名優の手形・足形が残っているチャイニース・シアターや、ウォーク・オブ・フェイム。どちらも、スターの栄光を永遠に、しかも身近に伝え継ぐ良い方法であろう。映画の都・ハリウッドならではであろう。





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