ロサンゼルスのスシ・バー


メルローズでバスを降りた。そこは、ブティックやアンティーク店が軒を連ねる、ロサンゼルスの流行の最先端の通りだ。
そんな若者の街でショッピングを楽しんだ後、お目当ての寿司バーを訪ねる。食道楽の妻がガイドブックで調べておいた、和食レストラン「トミー・タングズ」だ。
カウンターで握るのは、和やかな笑顔のメキシコ系の2人の青年だ。片言の日本語での控え目な対応である。わたしは熱燗でトロを頬張り、妻はアメリカ産を次々と握ってもらっている。でも蒲焼風の鰻だけは、日本からの直送だという。
腹一杯飲み食いしても、会計は日本に比べて驚くほど安いのがアメリカの寿司だ。
以前、ニューヨークを訪れた折に、寿司を食べ歩いて知ったことだった。「牛肉は日本で。寿司はアメリカで」との店長の言葉を思い出す。
牛肉は日本のものよりもかたく、マグロは日本に輸出しているから、当地で食べるのが安くて旨いのだ。
翌日は、ハリウッドの丘の中腹にある「山城」を訪ねる。
「その道を真っ直ぐ行けばいいよ」と、前日親しくなった土産屋の日系の店主に言われた通り、暗い道を息を切らせて辿り着く。
「ウォーキング?」と、目を丸くしていた店の青年。ロスでは我々のような来店客は、珍しかったに違いない。
名の通り、城のような立派な日本建築である。入って見ると、従業員やお客はアメリカ人ばかりだ。
見事なハリウッドの夜景を眺めながらの、寿司と熱燗の味は格別だった。
それよりも、次々とわたしのテーブルを見に来る板前たち。ビールならぬ、熱燗と寿司との組み合わせが、不思議そうな眼だった。





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