晩秋のある晴れた日



春には見事な花を見せてくれた、遊歩道の桜並木。すでにすっかり葉を落して、冬の準備も万端だ。
ウォーキングしていた足元を、変った飛び方の蝶が過ぎった。
吸い取り紙に水をいっぱいに含ませて、重そうに翅をはばたいているようなキチョウである。
目で追っていたが、高く飛翔できないでいる。気怠そうに飛ぶ、キチョウの運命が気掛かりだ。
道路の側に植えられた、青々とした椎の木を見ながら歩いていると、その下に忙しそうに飛ぶ小さな蝶がいる。
近づいてみると、ヤマトシジミである。鱗粉もところどころ剥げ落ちており、翅の破れた「ボロ蝶」である。傷だらけの小さな体で、残り少ない命を精一杯生きようとする姿は、いじらしくもあり、「頑張れ!」と、声をかけたくなる。
上空にはスジグロチョウが、速い速度で過ぎって行った。花蜜も見当たらないのに何を求めて、どこからどこへと行くのだろうと、思いを巡らしていた。
わたしはいつも思う。「蝶は好いなあ……」と。
美しい晴れ着を着て、大空を自由に飛び、好きなところに住んで、自由に遊び、好きな蜜を好きなだけ吸って、いつもきれいな花と接して、恋をして……。
しかし我々が思っているほど、蝶の世界は楽しいことばかりではないかも知れない。
鳥などの外的も多く、雨の日や風の日のは、充分な蜜にもありつけずに、ひもじい思いをしているかもしれない。
花壇には、白や黄、赤色の小菊が咲き競っている。
見上げる上空には、ヒヨドリたちが飛び交い、木の天辺では、モズが高鳴いていた。
さまざまな蝶や鳥たちを眺めつつ、晩秋の気分をしばし満喫した。




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