ベトナムの果物


広がる水田の輝く青さ。三々五々と群れる草地の水牛。そんな長閑な田園風景を眺めつつ、一歩町に人ると情景は一転する。
タクシー、シクロ、バス、トラック……などの渦巻く世界だ。雑踏、騒音、いや活気は、エネルギッシュで躍動的な町の光景でもあろう。
見かける果物屋では、色とりどりのフルーツが山積みされていた。日本ではお目にかかれない、トロピカルフルーツの数々。果実に目が無いわたしは、見るほどに咽から手が伸びてくる。
先ず目につくのが、ランブータンだ。濃い赤色のピンポン玉ほどの外皮は、刺のような突起物に覆われた気味の悪い外見だ。
しかし果肉は白くツルツルしており、薄い甘味があり、外見とは裏腹に上品な味だ。熱帯果実の中でも、わたしはこれが好きで、タイやカンポジアの旅でも、よく食べた。



店に並べられた果実は、東南アジアで共通するものが多い。ヤシの実の、透明な液の微かな甘味もいい。ライチーに似た竜眼や、甘酸っぱいマンゴスチンも旨い。それに、完熟してから穫ったバナナは、ことのほか美味である。日本で食べるバナナとは、一味もふた味も違う。
寺院などで、木になっているのをときどき見かけるのが、ジャックフルーツだ。発疹状の小突起に覆われた巨大な外皮の中味は、黄色いべっとりとした甘い果肉である。
これは時節的な出会いであろう、ドラゴンフルーツをよく見かけた。サボテンの実のピンク色の大きな果実は、見た目はグロテスクだが、中味は乳白色の果肉にゴマ粒に似た種が、キウィの種のように並んでいる。
市場を覗いて見ると、果実の種類の多さに驚かされる。ホーチミンの「ビンタイ市場」やフエの「ドンバ市場」など、人の数も果実の数も満ち満ちた、活気溢れる市場だった。




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