チェンマイの象のキャンプ


 「チェンマイ美人」でも知られた、古都チェンマイ。豊かな緑に囲まれて、活気と静けさとが調和した、タイ北部最大の都市である。
午前8時にホテルを発ち、「エレファント・キャンプ」へと向かう。9時半から象のショーがあり、これは見ものである。また1時間ほどだが、象に乗ってジャングルを巡るのも楽しみだ。
キャンプに着くと、チケット売場前で先ずは、象に与える餌のバナナとサトウキビを買う。わたしが食べたいほど、旨そうなバナナだ。サトウキビは、20cmほどに切り揃えて束ねてある。
象の餌をぶら下げて、なだらかな山道を登って行く。ときどき後方から、象使いが乗った象が一列に並んで、我々を追い抜いていく。
どの象も長い鼻をブラブラさせ、歩きながら餌を探している。小さな目で、めざとくバナナやサトウキビを見つけると、長い鼻を伸ばしてくる。後方から重々しい足音が聞こえてくると、手にした象の好物を隠さねばならない。
途中に、象の溜り場があった。太い丸太で組んだフェンスの中には、たくさんの象がいる。どの象も柵から身を乗り出して、長い鼻を前後左右に振りつつ、我々観光客から餌をねだっている。
象の目は、実にかわいい。どの象にもまんべんなく、バナナやサトウキビ片を与える。ザラザラとした鼻先が指先に触れると、「手も餌と間違えやしないか。鼻に巻き付かれやしまいか?」と不安になり、あわてて手を引っ込めてしまう。



象は感受性が豊かで、象使いの愛情を受けて育ち、信頼関係が築かれるという。体の大きいアフリカ象は、頭が小さくて耳が大きい。 ここのインド象は、頭が大きく、耳が小さい。
インド象は性格がおとなしく、飼い慣らし易いという。訓練は3歳ごろから行い、一人の象使いが終生生活を共にするそうだ。象の寿命が80年というから、「人と象と、どちらがさきに死ぬか?」という齢である。それにしても生涯寄り添って生活を共にしてきた、人と象。どちらかの死期が追ってくると、すばやく肌で感じ取り、悲しみにむせぶことだろう。
川では、10数頭の象が水浴びをしていた。それぞれの象使いが指示すると、全部の象が横になり、体を洗ってもらっている。水浴び好きのどの象も、もともと小さな目をさらに細めている。さらに山道を登ると、象の曲芸場に出た。




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