タイ北部の山岳民族村


バスはゆっくりと山道を登っていく。大型車が入れない細い悪路になると、ジープに乗り換えた。山岳民族の村は、もう近い。
坂道に沿って建っているアカ族の部落は、人影が少なかった。何人かの子どもたちと、民族衣装を着けた、痩せ細った小柄な老婆だけだ。彼女は、物乞いをするように寄ってきた。円錐形の帽子と黒を基調とした、典型的なアカ族の日常の服装をしている。
アカ族は、チェンマイとチェンラーイの間に、約2万人が点在しているそうだ。土産屋は道路沿いだが、家々は、山の斜面にへばりつくように建っている。太い竹で組んだ骨組みに、ヤシの葉やワラなどで壁や屋根を葺いている。土間の中央には小さなカマドがあり、ここで煮炊きをしている。鍋、釜などは壁に吊してあり、小さな部屋には蚊帳が吊られている。
村には、痩せた犬が走り回っていた。食用犬で、珍重しているとか。
近くにヤオ族の部落があった。ここでは、若い女性が多く、みんな、紫紅色のマフラーのような衿付き上着をきていた。ヤオ族の方が、お洒落な人たちが多い。家はアカ族と似ているが、高床式ではなくて、地面上に直接建っている。



ヤオ族は、中国・湖南省の山地から、二千年以上も前から南下してきて、北部タイに住み着いたという。彼らは自分たちのことを、「人間」という意の「ミエン族」と呼んでいるそうだ。
山岳民族の部落からジープで山を下り、バスに乗り換えてから、チェンセーンの町に戻る。レストランで昼食後、「黄金の三角地帯(ゴールデン・トライアングル)」を訪れる予定だ。
最前より気になっていたことだが、どこへ行っても墓が見渡らないのだ。S氏に訊くと、散骨にするという。人が死ぬと1〜2週間の葬儀をし、火葬にした後で灰を川や山に撒き、自然に戻すそうだ。
 


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