メコン川に沈む夕陽


王宮の裏側から登れる、プーシーの丘からの展望が素晴らしい。ルアンパバーン(ラオス)の町はもとより、メコン川やカーン川に沈む夕陽が見事である。高さ150メートルの頂へは、328段の石段を登って行く。
道路際から、いきなりくねった石段が続いている。しばらく登ると、岩の窪地が輝いていた。近づいてみると、金色の五体の像があった。高い台座に坐る仏陀と、その周囲には、4人の僧が正座をして合掌している。実にきらびやかで、今しがた金色に塗られたような、輝きである。
ほどなくすると、寺院のある頂に着く。滲んだ額の汗を拭いつつ、見晴らしの良い辺りを見渡した。
頂の狭い寺院前は、混み合っている。メコン川に沈む、夕陽を見るために集まってきた人たちのほとんどが、欧米人の若者たちだ。



ここからの展望は、実に素晴らしい。メコン川とカーン川の間に広がる、ルアンパバーンの町を一望に収めることができる。その緑豊かな古都は、箱庭のような町並みである。
この頂の寺院には、仏塔がある。塔は、「タート・チョムシー」といい、1804年に、アヌルット王によって建てられたものだ。また、この山の東側には機関銃の台座があり、10年前までは軍の支配地だったそうだ。
残念なことに、案じていた雲がしだいに多くなってきた。赤味を帯びながら落ちてきた太陽が、徐々に隠れていく。「もう夕陽は顔を出さないだろう」と、見切りをつけた人々は丘を下り始めた。おかげで、混雑していた頂の寺院前が、だいぶ空いた。仄かな期待をもって、もう少し待つことにした。



実に幸運だった。待った甲斐があり、厚い雲が切れ始めて、どんどん流れて行く。しばらくすると、赤く染まった太陽が少しずつ顔を見せ始め、流れ行く雲の下に丸い盆のような姿を現した。見ていた人たちの溜息が一つになり、感嘆の声に変わった。
夕陽は、細い枯れ枝のようになった前方の落葉樹の間を、ぐんぐんと下がって行く。メコン川に落したオレンジ色の輝きを、徐々に長くしていき、背後の小高い山の陰に落ちて行った。実にダイナミックで、自然が創り出した神秘的な光景に見入っていた。
辺りは、時を追うようにして暗闇に変わっていく。感動的な余韻に浸りつつ、暗く細い山道を下って行った。
町の中では、道路の両端に店を並べて、ナイト・バザールが開かれていた。やはり、ラオス伝統の織物や木工製品が多かった。



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