インド人好み

郊外にある、瀟洒なレストランでの昼食。
最上階の見晴らしの良い、窓際のテーブルに席を取る。 椅子に座ると、体が動いていることに気付いた。回転展望台になっているのだ。
ゆっくりと、レストラン全体が回っている。風景が少しずつ変わっていく。辺りは木々が多いので大きな変化はないが、徐々に変わりゆく情景は、動くキャンバスを見ているようだ。
遠方の緑の地平線上に、ひときわ大きな白い建物がそびえている。丸いドームがぼんやりと見える、タージ・マハルである。それはまるで、真珠を屋根に載せたようにも見える。先ほど訪れた情景を思い出しつつ眺めていたが、その姿もゆっくりと遠のいていった。


そういえば、かつてニュー・デリーで、このようなレストランに行ったことがある。
デリーに住むガイドの友人Rさんの案内で、高層ビルの最上階のレストランへ行った。回転速度は今よりも速く、ニュー・デリーの三六〇度の眺望を楽しんだことを思い出した。
彼と三度目に会ったときも、そのレストランに行ったのだった。Rさんにとって、いやインド人にとって、このような動きのある建物が好みのようだ。



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